2013/12/22

『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』

Category: 書籍,社会・政治・世情一般 — Annexia @ 23:59

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 速水健朗氏の『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』を読みました.

 日本人の食生活を、有機栽培や地産地消、ベジタリアンといった『フード左翼』と、ファストフードやメガ牛丼、コンビニ食といった『フード右翼』に分けて、それらと政治を絡めて検証するという本です.

 読み始めるとすぐに縦軸に健康志向とジャンク指向、横軸に地元主義とグローバリズムをとったマトリクスが出てくるのですが、その表からも明らかなようにフード左翼は高コストで高級指向、フード右翼は低コストでジャンクという傾向が伺えます.
 自分はどこに位置するんだろうとポジショニングを確認しましたが、マクドナルドは行かないもののコンビニ食が多くB級グルメが好きなあたりはフード右翼に近いのかもしれません.とはいえ、美味しいものは好きなので、きちんとした料理を求めたことによる結果としてフード左翼的な傾向もありそうです.

 興味深いのが、「フード左翼」的なるものとしてひとくくりにされがちなベジタリアン(菜食主義者)でも、ビーガン(肉だけでなく牛乳や乳製品も摂取しない)、マクロビオティック、ローフーディズムは思想や立ち位置が異なるということ.
 自分のような外野からすれば同じように見えるのですが、菜食主義になった理由も、健康のためと自然環境を考慮してと異なっていたり、調理法にしても加熱することに対する是非であったりと、それぞれに主義主張が異なるのです.
 この本ではタイトルは「フード左翼とフード右翼」となっていますが、ページの多くをフード左翼に相当する事柄に割いており、これは言い換えるとフード左翼的なるもののほうが思想やものの見方など、筆者が興味を引く部分が多かったのではないかと想像されます.逆にいうとフード右翼的なるものは、一部の例外を除いて「食」そのものにさして興味のない、もしくはそこにコストをかけられないという側面があり、言い換えるとフード左翼に比べて多くを語るようなコンテンツを持っていないという見方もできそうです.

 そして、読み進めていって意外というか軽くショックを受けたのは、フード左翼の目指す有機農法が決して「明るい未来」にはつながってないということ.
 一言でいえば、農業に必要な栄養物である「窒素」を化学肥料に頼らず有機肥料で得ようとすると、多くの森林は伐採され、魚も取り尽くされてしまい、途端に生活環境も食料事情も悪化してしまうということなのです.
 「自然によく」「体によい」と思われている有機農法の問題点を知ることで、回帰するようにして自分の頭の中に思い浮かんだのが対極にある「フード右翼」のこと.ジャンクで体に悪い食品ではあるものの、「低コスト」で「ハイカロリー」というのは、食料事情を考えたときにひとつの解になるのではないのかと.もちろん、現状のままジャンクフード食べて養分摂取というのではなく、適度なところでバランスをとるのがよいことは言うまでもないことですが.
 余談ですが、外食チェーンで出される食事の多くに「たまに食べるにはいいけど、これを毎日食べたら体を壊す」という印象を自分は抱いています.しかしながら、例えばサラダラップのようなヘルシーなメニューをマクドナルドで出しても売れなくてすぐに販売終了になってしまうということからも明らかなように需要と供給のバランスがそうさせている側面もあるわけで、食べ物って奥が深くて難しいなと痛感させられます.