2012/01/17

情報の呼吸法 / 津田大介

Category: 書籍 — Annexia @ 23:43

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 津田大介氏の「情報の呼吸法」を読みました.
 津田氏はジャーナリスト/メディア・アクティビスト.自分が最初に名前を知ったのは音楽の著作権がらみで国の審議会に出席していたことから.国の審議会などというお堅い場なのに金髪の人がいる!と不思議に思ったのが記憶に残っています.個人的に音楽業界の著作権等に対する方針には疑問を感じていたこともあり、津田氏が孤軍奮闘して主張する姿には共感を覚えたものです.
 その後もMIAU(インターネットユーザー協会)を立ち上げたりするなど、活動の様子はネットのニュースなどでちょくちょく名前が出ていましたが、存在感がもっとも感じられたのは東日本大震災以降でしょう.Twitterを主軸に情報を捌く技量には感服しました.

 この本は、津田氏が今までにしてきた行動を振り返りつつ、どのように情報を取り扱い、つきあってきた/いくかを解説したものです.が、少しつかみどころのない内容になっています.内容がないというのではなく、むしろ逆で、テーマを細かく切って過去の経験を織り交ぜながらノウハウを提供しているのでコンスタントに濃い内容が続いている、そんな感じです.

内容をかいつまんで紹介すると、
・ネット(ソーシャルメディア)の登場によって情報の流れが変化してきている.象徴的な事例として、TVや新聞よりも先にYouTubeで尖閣諸島の中国船衝突事件は流された
・震災のときの状況分析は1-2名の専門家しか出ないTVよりも、各分野の専門家がネット上で情報を提供し分析することで幅広く情報を得ることができた.しかしその反面、情報が錯綜して整理役が求められるようになった
・Twitterは自分が求める情報以外の「誤配」される情報があるからおもしろい
・自分と同意見の人だけをフォローし、他をノイズ扱いして除外していくと情報のタコ壺化が発生し、視野が狭くなる
・TwitterのTLを楽しく追えるのは300-500人くらいまで
・TwitterやFacebookなど多々あるソーシャルメディアから自分に合ったものを選ぶべき
・ソーシャルメディアでの人とのつながりはソーシャルキャピタルである.相手から見れば自分自身も他人の資本である
・情報発信をしないことにはリターンがない

 共感するところが多々あると同時に、自分のネットや情報に対する姿勢やものの見方があながち間違ってなかったことを認識できたことも大きな収穫でした.
 文体が柔らかく、細かくテーマが切られていることもあって内容の充実度のわりに読みやすいです.オススメです.