
FUJIFILM X100F
X-Pro2を下取りに出してX-Pro3に買い替えたわけなのですが、両者の違いというかX-Pro3になって改善・改悪されたものを、X-Pro2の記憶が残っているうちにまとめてみました.
■X-Pro3の(X-Pro2より)いいところ
・AF性能の向上
-6EVからAFが作動し、日が落ちてかなり薄暗いような状況でもすんなりとピントが合います.また精度自体も上がっている感じがします.
・画質の向上
画素数は200万画素増えた程度なのでその点では-Pro2とは大差ないです.
X-Pro2との違いとしては「カラークロームエフェクト」「カラークロームブルー」「明瞭度」といった新たな色味をコントロールする技術が導入されていることもあって色つぶれなどが抑えられている印象です.ただし「明瞭度」については撮影後の後処理が重いようで、撮影後に数秒処理に待たされるので現状では実用に耐えられないと判断して使用していません.
・新しいフィルムシミュレーション『クラシックネガ』
コントラストがややはっきりとしており、白とびしやすいなどクセの強いフィルムシミュレーションですが、銀塩フィルムに近い雰囲気があり、アンダー目の露出で金属や人工物を撮ったときの色合いが好みです.
・スマホとの連携
X-Pro2のときはカメラ側でWi-Fiを起動してからiPhoneやiPadを操作して接続していましたが、X-Pro3ではカメラ側は電源さえ入っていれば手を触れることなくiPhone/iPadからBluetooth接続でWi-Fiを自動起動させて通信できるようになり手間が省けました.ただし、通信速度の改善は求めたいところです.
・電池蓋/メモリカード蓋
蓋の構造が変わり、どこかに引っ掛けただけで不用意に開いてしまうようなことがなくなりました.閉じるときは蓋を押さえるだけでロックされるので安心かつ使いやすくなっています.
・MFレンズの名称登録機能
Mマウントレンズをマウントアダプタで使っているのですが、X-Pro2までは焦点距離のみ登録可能でした(EXIFに残すためというよりOVFでの枠表示のために必要なので).X-Pro3からはレンズ名称まで登録できるので、同じ焦点域のレンズを複数持っていてもEXIFにレンズ名が記録されるので判別がつくようになりました.これは便利.ただし、文字数の制限があるので、「Voigtlander SUPER WIDE-HELIAR 15mm F4.5 Aspherical II VM」みたいな長い表記をそのまま登録はできません.
・EVFの画質向上
有機ELになったのと画素数の向上でかなり見やすくなりました.リフレッシュレートが上がっているのとそれに加えて映像と映像の間に黒画像を挟むことで残像も抑えられています.
また「イマイチなところ」で書きましたがOVFの対応範囲が縮小されたこともあってX-Pro3ではEVFメインで使用しています.
・小型液晶によるフィルムシミュレーションの表示
実用性がそれほどあるわけでもない『お遊び機能』といってもいいようなものですが、意外と楽しいですね.
フィルムパッケージ風のフィルムシミュレーションの表示以外に、シャッター速度や絞りなどのパラメータを表示される設定も用意されてはいますが、富士フイルムのカメラはその大半をダイヤルで設定するので、画面を見なくても本体のダイヤルを見ればどのような設定になっているかわかることもあって、こちらも必要性はさして感じません.
フィルムパッケージ風の表示でもホワイトバランスとISO感度が表示されていますが、ここにもうひとつ撮影可能枚数も表示してもらえたらなおよかったです.
■X-Pro3の(X-Pro2より)イマイチなところ
・OVFが対応可能な焦点領域の縮小
X-Pro2では16mm(35mm換算24mm)からOVFのフレームが表示可能だったのですが、X-Pro3からはEVFの表示を優先してOVFの2段階表示を廃止したため、23mm(35mm換算35mm)から対応するようになってしまいました.なんでもX-Pro2ユーザにアンケートを取ったところ、大多数がOVFよりもEVFで撮影しているそうでEVF優先の設計となったそうです.自分は大半をOVFで撮って、晴天下などOVFのフレームが見づらいときだけEVFに切り替えていたのですが、自分のような撮影スタイルの人は少数派だったようです.機構の簡略化によってOVFの見やすさも改善されているようですが、使用できる範囲が狭められているようでは元も子もない気がします.
このカメラの性格を考慮すると、スナップで多用される18mm(35mm換算27mm)レンズあたりからOVF対応してもらいたかったです.
・天板の仕上げのクオリティ
天板と床板に硬い反面、加工の難しいチタンを採用したため、加工に起因するシワ状の歪みがあります.また天板左上の機種名表記がX-Pro2までは刻印にホワイトの墨流しで高級感のある仕上がりだったのですが、それが凹凸のないプリントになってしまいました.趣味性の高いカメラですので、仕上げの部分には手を抜かないでほしかったです.
・旧型バッテリNP-W126への対応
X-Pro3の標準バッテリはNP-W126Sです.旧型のNP-W126とは形状等も含めて同じなのでどちらも使用可能ですが、NP-W126使用時にバッテリ寿命が短くなるという警告が電源を入れるたびに表示されて煩わしいです.写真を撮ることに専念するように設計されたカメラだというのにいささか本末転倒な気がします.
・充電器が別売
X-Pro3からは本体充電できるようになりました.そのせいもあってか充電器が付属しません.自分は本体充電は非常時しかしないので充電器が付属しないのは困りものです.
・十字ボタンの廃止
十字ボタン自体は廃止になってもメニュー移動などはフォーカスレバーで代用できるのですが、十字ボタンの上下左右に機能を割り当てていたものが使えなくなったのがマイナスです.割り当て可能なボタンが用意されているので代用は可能ですが、十字ボタンのすべてをフォローしきれるほどのボタンは用意されてないのが困りものです.
・なんとなくスイッチなどの感触がゆるい気がする
X-Pro2に比べてフロント側にあるレバーのがたつきを感じます.個体差でしょうか.
・水準器について
水平だけでなく奥行きの傾きも検出する三軸の電子水準器が搭載されているのですが、標準では水平方向のみの二軸水準器しか表示されません.メニューまたはキー割り当てから水準器を呼び出した場合のみ三軸水準器が表示されます.モニタやOVF/EVFに表示する項目を選ぶ設定で単なる水準器表示のON/OFFではなく二軸か三軸かを選ばせてくれればいいのですが.
■その他
・Hidden LCD
賛否両論渦巻く、格納されたモニタ.カメラ系ライターの記事などを見ても意見が分かれているようで、かなり否定的な見解の人も見受けられます.わざわざ蓋をして不便にするのはいかがなものか、ファインダを半強制的に使わせるのはどうだとかって.
言いたいことはわかるのですが、多様性というか様々な撮影スタイルがあることは悪いことではないと思うのです.X-Proシリーズは富士フイルムのカメラの中でもクラシックな作りやデザイン、操作性を意図したカメラです.機能や効率性を追い求めたカメラであればX-TシリーズやX-Hシリーズがあります.同一メーカーの中で複数の製品があって(いいことなのか悪いことなのかわかりませんが、富士フイルムの開発リソースの制約上、センサーや画像処理エンジンは世代間で同じものを使っているので性能は大体似たようなものです)、様々な撮影スタイルに対応するうえでこのようなカメラが出てくること自体、面白いことです.それを利便性という枠に押し込めて否定的な見解をすること自体、カメラ趣味の多様性の芽を摘むことになりかねないのではないかと思うのです.
自分も撮影していて、この蓋のあるモニタが今後の主流になるとは思えませんが、「撮影する→モニタで確認する→撮影する」ではなく「撮影する→撮影する→撮影する(必要だったらEVFで確認する)」という撮影の流れはテンポよく撮影できて悪くないとは思います.
ここでOVFの機能を簡略化してEVFのスペックを上げてきた話につながるのですが、EVFメインで撮影をして、撮影時にきちんとフレーミングをしてピントも合わせて、フィルムシミュレーションの色味や露出も確認できるのだからそのあとでいちいちモニタで確認する必要もなかろうと(どうしても必要だったらEVFで確認できるし)考えると開発者側も意向もなんとなく見えてくる気がします.それを「押しつけ」とみるかどうかでこのカメラへの評価も変わってくるような気がしますね.
長所短所などいろいろと書き連ねましたが、ひとことでまとめるのならばニッチでマニアックなカメラということなのでしょう.X-Proシリーズは他のカメラと比べても販売期間が約4年と長めなので特徴のある仕様で長く支持されるカメラを作ったという見方もできるかと思います.
購入当初は戸惑うところも多くて使いこなせるか心配でしたが、購入から約1ヶ月、使うたびに馴染んでくるのを実感しています.
はじめまして。
X-Proの記事興味深く拝見しました。
カメラはほとんど初心者の40台男です。カメラを始めたいのですがなにを買うか種類が多く迷っています。
使用用途は神社、仏閣などのスナップを撮りたいです。
とりあえず、折角カメラで撮るので、ファインダー付きがいいなあと思っています。今、気になっているのはom-d em5 Ⅲ、フジのX-E3あたりです。予算はレンズ込みで20万円位。なるべく小型が良いです。もしよろしければおすすめのカメラとレンズを教えて下さい。
乱文失礼しました。
コメント by kyosuke — 2019/12/21 @ 16:49
kyosukeさん
コメントありがとうございます.
神社仏閣は自分も旅先などで撮影しますが意外と難しいですよね.
たとえば山門ひとつとっても、屋根は明るめの色だったりするうえに陽が当たっているのに、軒下は薄暗いのでどちらかに明るさをあわせると、反対側が真っ白だったり真っ暗になってしまいがちです.
また、境内などは三脚禁止のところも多いですし、薄暗い中で手持ちで撮影するとなると手ブレになりやすいという問題もあります.
ですので、HDRと呼ばれる複数枚数を連写してカメラ内で自動合成する機能(明暗の激しい被写体に効果があります)と、手ぶれ補正があるカメラが良いかと思われます.
OM-D E-M5mkIIIとX-E3が候補だそうですが、その他のカメラも含めてもE-M5mkIIIはコンパクトなボディとHDR機能、そして強力な手ぶれ補正を備えているので用途にあっている気がします.オリンパスはマイクロフォーサーズ規格でカメラのセンサーサイズが小さいのが難点といわれますが、同じレンズ絞り値で前後のピントの合う範囲が広いので、薄暗いところでもピントの合う範囲を広くできるというメリットがあります.
富士フイルムはX-H1以外はボディに手振れ補正が付いていないので、X-E3などを選んだ場合には手振れ補正付きレンズが必要になります.
あとはレンズですが、E-M5mkIIIですと14-150mmのついたレンズキットがボディのみの価格に15,000円くらい追加で買えますので、最初はこれがよさそうですね.オリンパスには12-100mm F4 PROという素晴らしいレンズがあるのですが、いかんせんちょっと高いです……
不明なところなどありましたらまたコメントください.
コメント by Annexia — 2019/12/21 @ 18:43
Annexiaさん。
丁寧で詳しい返信ありがとうございます。
影、日向とHDRのお話はとても素人では考えつかないところでした。
実は今日も新宿まで出かけ逡巡し、今帰宅したところです。
おすすめは機能面から考えるとE-M5mk3なんですね。ですが今日店舗で見ていた時間が長かったのはX-E3の方なんです。Annexiaさんのコメントを読んでまた悩んでしまいました。
年末の休暇はカメラをいじって遊びたいので、どちらにしても「購入しない」という選択肢はなさそうです(笑)相談させていただいた手前、購入したらご報告させていただきます。
ありがとうございました。
コメント by Kyosuke — 2019/12/21 @ 21:32
Kyosukeさん
X-E3もいいカメラですね.自分が富士フイルムのカメラの気に入っているのはやはり画質です.フィルムメーカーらしく自社のフィルム名をつけたフィルムシミュレーション機能を搭載し、まるでフィルムを交換するかのように画像の表現を切り替えられるのは魅力です.
ただX-E3でひとつ気になるのは、発売から2年以上過ぎているのと、センサーなどが一世代古いものなので、そろそろ新型が出るのかもということです.来年2月末にCP+という写真関係のイベントがあり、富士はそこで新製品の発表をすることが多いので、もし可能ならそこまで待たれたほうがいいかもしれません.
http://www.cpplus.jp
こちらのページに発売の周期がまとまっていますので、一つの目安になるかもです.
http://ulysses.jp/user_data/norusoru.php#FUJIFILMX-E3
コメント by Annexia — 2019/12/21 @ 23:36
Annexiaさん
悩んだ末、X-E3 18-55のレンズキット(黒)と純正ボトムレザーケース(黒)の他、レンズの保護フィルターやクロスなどを購入しました。最終的には見た目の好みで決めてしまった感じです。
店員さんに単焦点のレンズ、XF16mmF2.8 R WRをすすめられましたが、一度18-55を使いながら実際にどの様な「画角」(というのですかね?)が私にあっているか試してみようかなと思っています。
年齢の割に神社巡り(御朱印集め)は地味な趣味だと思いますが、少し出かける楽しみが増えた気がします(使いこなせるかはわかりませんが。。)
発売の周期のまとめサイトや展示会の事など色々教えていただき、ありがとうございました。m(_ _ )m
コメント by Kyosuke — 2019/12/22 @ 20:27
Kyosukeさん
購入されましたか!スペックも重要ではありますが、やはり最後は自分の気に入ったものを買われるのがいちばんかと思います.
18-55mmのレンズは設計は古いですが画質はいいんですよね.最初にズームレンズで撮っていくと、もっと広く撮りたい(広角レンズ)とかもっと遠くのものをアップで撮りたい(望遠レンズ)とか出てくるかと思いますので、その段階で16mm F2.8などを買われるのがよいかと思います(16mm F2.8は次のブログのネタとして書いています).
御朱印集めは自分も旅行のときに御朱印帳を持参してやっています.人気の多い神社だったりしますと順番待ちだったりして最近は集めている方が多くなった気がしますね.
コメント by Annexia — 2019/12/22 @ 21:16