2016/08/11

立川で【極爆】シン・ゴジラ

Category: 映画 — Annexia @ 20:29

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 立川で「シン・ゴジラ」の極爆こと、極上爆音上映を観てきました.

 これでシン・ゴジラを観るのは4回目になります(過去3回はすべてIMAX).
 極爆の名に恥じない重低音で、ゴジラが歩くたび、そして尻尾が地面に叩きつけられるたびに振動といっていいほどの低音が響き渡ります.逆にそれが影響しているのか、IMAX上映のものに比べてややセリフが聞きづらいようにも感じられました.
 今日は祝日、なおかつお盆休みシーズンということもあり、極爆上映回は売り切れ.その爆音を、そして映画の舞台(のひとつ)でもある立川という場所柄か、熱心なファンが来ているようで上映終了後には拍手が起きました.自分も拍手しました.

(ここから下はネタバレを含む感想です)

 1回目の上映は興味本位で見に行って圧倒され、2回目以降はディテールを追うようにして緻密に作り込まれた映像やセリフを楽しむために観にいきました.
 3時間分の脚本を2時間に濃縮したといわれるだけあって、セリフの量(大量の専門用語も含む)も多く、内容も濃くディテールも作り込まれています.そのそれぞれに言及してまとまった文章にして感想を述べる能力は自分にはないため、箇条書きで感想を書きます.

・これは怪獣映画であるが、怪獣映画という括りにはとても収まらない.現在の日本が予期しない災害や危機に直面した場合に想定される行動をシミュレーションした映画でもある(もちろん映画なので脚色はあるけれど).なので、「ゴジラでしょ、ただの怪獣映画でしょ」と思って観にいかないのは損だと思う

・映画の前半の多くを占める会議(閣議)シーンが当初は冗長に感じられたものの、刻々と変化していく情勢に政府が追いついていけずに翻弄される様子が5年前の震災のときを見ているかのようで恐怖感を伴ったリアリティがある.発言が公式記録として残される会議において、官僚が用意した原稿を読み上げる閣僚が途中で訂正の入ったメモを後ろからすっと出されて訂正する様子が妙な現実味があって好き

・出演するキャストの人数が300人以上もいるのに、キャラクタがしっかりできている.とくに閣僚は防衛大臣がこれは明らかに小池百合子をイメージしているなとわかるし(エンドロールに取材協力として小池百合子の名前が出ている)、巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)のメンバーも一癖も二癖もあってとてもいい.個人的にはやはり、環境省自然環境局野生生物課長補佐の尾頭ヒロミと、文部科学省研究振興局基礎研究振興課長の安田龍彥がすごくいい味を出している

・蒲田で京浜急行の列車がぶん投げられて宙を舞うシーンはなんだか怪獣映画の醍醐味って感じがした

・蒲田で「ジャック&サリー ねこ病院」って看板が出てくるけど、ジャックもサリーも庵野家の猫ですねw

・品川で最初に自衛隊のAH-1S戦闘ヘリが攻撃を仕掛けようとしたときに避難が遅れた市民がいたときの「まだ市民がいます、撃ちますか」を3回中継して統合幕僚長が防衛大臣に「まだ市民が残っています」といい、そして防衛大臣の「総理、撃ちますか!」のくだりがとてもいい.こういう冗長ともいえるディテールがこの映画のリアリティを高めていると思う.怪獣出現→自衛隊出動→攻撃、という単純な流れではこのリアリティは出せない.自衛隊を出動させてから発砲するまでの審議(憲法第何条を適用するかなど)が作品に重みを加えている

・アメリカ大統領特使のカヨコ・アン・パタースンのネイティブな英語混じりの日本語、あれ話すの大変だったろうなと思う.以前に同じような喋りをする人を知っていたので自分はリアルだなと思ったけど、なんか胡散臭いと思う人も多そうなキャラクタ

・2回目のゴジラ上陸で東京に進行を防ぐべく、多摩川の丸子橋・武蔵小杉で自衛隊が迎え撃つ「タバ作戦」は圧巻.AH-1SとAH-64Dの機関砲から始まり、10式戦車99式自走155mm榴弾砲、最後は三沢のF-2JDAMまで、攻撃しまくり.されど大臣の「やったか?」というセリフや、ただゴジラを怒らせただけというところは怪獣映画のお約束w

・アメリカ大使館を保護するためにB-2が3機飛来したシーンで「アメリカの攻撃があります、地下に避難してください!」というのがなんか怖くて.現代を描いた映画でこのセリフが出てくるのは嫌だなと

・B-2の1号機がバンカーバスターでゴジラにダメージを与えたところで閣僚から「やっぱ米軍はすごいな」というセリフの後ろで防衛大臣がすごく嫌そうな顔をしているのがいいw

・米軍のB-2すら歯が立たず、飛来するものすべてを無条件に迎撃されるという状況の結論として、安保理と国連決議で核ミサイルを撃つという提案が可決されたので法案を作ってくれと里見内閣総理大臣臨時代理から言われた赤坂内閣官房長官代理の戸惑い、目の泳ぎ方に演技の妙を感じた.また、ゴジラに対する核攻撃の予定を知った巨災対メンバーの反応、とくに文部科学省研究振興局基礎研究振興課長、安田龍彥の「そりゃ選択肢としてはあるけどさ、選ぶなよー」のセリフが刺さる

・最終決戦であるヤシオリ作戦.ゴジラに血液凝固剤を飲ませて活動を停止させる作戦を、ヤマタノオロチに八塩折之酒(やしおりのさけ)を飲ませた神話になぞらえるあたり、庵野総監督のセンスを感じる

・ヤシオリ作戦.いきなり冒頭から陽動として無人新幹線爆弾(N700系新幹線)2編成をゴジラに突っ込ませて爆破.続いてゴジラの体力を削ぐために米軍のMQ-9無人航空機を大量に送り込み、対空ビームを出せなくなったところで東京駅周辺のビルをミサイルで破壊してゴジラの上に落下とか、多摩川のタバ作戦から打って変わって次から次へと奇襲攻撃.もはや人類とゴジラ、どっちが多くビルを壊せるか競争しているかのようですらある.自分もあとで知ったのだけど、10年後くらいに竣工予定のビルまでしれっと建っていてゴジラの上に落下するという手の込みようw

・ヤシオリ作戦.血液凝固剤を途中まで注入されるも再び暴れるゴジラに「この機を逃すな!」と無人新幹線爆弾に次ぐ第2弾として無人在来線爆弾(E231系E233系)のインパクト.山手線、京浜東北線、東海道線、中央線(これは東京止まりなので片側のみ)の上下の線路を使って両方向から列車を突っ込ませる攻撃は蒲田で京急の車両がぶん投げられたことへの意趣返しのようにも見えるし、いままでの怪獣映画で散々やられてきた列車の復讐のようにも見える

・凍結し動きの止まったゴジラの尻尾にある人のようなもの.具体的ななにかというのは明らかにされなかったのが不気味な余韻を残す感じに

・ゴジラの体内にある動力源である原子炉のようなものによる歩行後や攻撃後の放射能汚染、そしてヤシオリ作戦で倒れたゴジラに血液凝固剤を飲ませるために使われた大型ポンプ車の存在などは、2011年の震災の影響による福島第一原発の事案をやはり連想させる.この映画に深く恐怖心を感じるのはやはり5年前に起きた出来事の影響が大きいのだろうなと思う

・ヤシオリ作戦が成功に終わり、ゴジラから出された放射性物質の半減期が20日程度と短いことを突き止めた尾頭ヒロミのホッとした笑顔がいい、とてもいい(この笑顔以外はすべて無表情)

 というような感じでしょうか.
 4回も観に行っているのに、パンフレットが売り切れで買えないのがもどかしいです.


 【2016.08.26 追伸】
 5回目を見に行って、ようやくパンフレットを入手できました.
 「ネタバレ注意」と書かれた帯がついていることからもわかるように、各場面の詳細なストーリーが書かれています.
 また、取材やセット作成時の苦労話がすごくて、例えば首相官邸の執務室.見せてもらうことすらできないので、安倍総理のブログの写真の背景に写っているものをつなぎ合わせて270度まで再現し、足りない部分はさらに野田首相の時のものまでさかのぼってようやくつなぎ合わせてセットを作ったとか、徹底的にリアリティを追求しているのがわかります.パンフレットにも記載があるように、「ゴジラという壮大な虚構を成立させるには、他のものは極力、現実に即していなくてはいけない」というのが、ゴジラという虚構のものをリアルに近づける手段なのだろうなと感じました.

 無人在来線爆弾、5回目にして気付きましたが中央線が使われてますね.中央線は東京駅止まりで線路も途切れているので片側からのみの攻撃となります.パンフレットにもゴジラに両側から無人在来線爆弾が突っ込んでいく様子が引きのカットで出ていますが、片側6編成ずつ12編成のように見えます.中央線も使うのであれば山手線、京浜東北線、東海道線と加えて14編成突っ込めそうですが.

 【2016.09.30 追伸】
 8回目として立川にて字幕付き上映を見てきました.
 本来、字幕付き上映は聴覚障害者向けのものではあるのですが、専門知識をはじめとしてセリフや情報量の多い映画なので、セリフ内容の確認によいという評価だったので見に行ったというわけです.
 そもそも画面下に大きく説明の文字が入ってスペースがないところに大量のセリフが字幕として表示されるものですから、場合によっては画面中央に近いところまで字幕が表示されます.ニュース画面を模した映像などではそれこそ、上下左右に文字が入っているところに字幕が加わり、果ては総理会見のシーンでは総理の横で手話が入るので、聴覚障害のかたは目で追うのが大変だったのではないでしょうか.
 事前情報として知ってはいましたが「出世は漢の本懐だろ.そこに萌えんとは(以下略)」というように、え、そっちの漢字があてられるんですか的な意外性とか、「君の家来には助けられたよ」と聞こえていたところが「君のキャラには助けられたよ」だったりとか、また違った楽しみ方がありました.

 字幕付き上映は期間も限られるうえに上映している劇場も限られるので、本来の聴覚障害のかたが映画を楽しむ環境というのは限定されているものなのだなと感じました.ちょうど、同時期に『聲の形』という、聴覚障害を扱った映画が上映されていますが、やはり字幕付き上映は期間も劇場も限られるそうで(しかも上映開始から時間も経っている)、こういうところから改善していくことで世の中に変化をもたらすことができるんじゃないかとも思いました.

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