今年はYAMAHA TW-E7Bを購入し、左右独立式のワイヤレスイヤホンはこれで十分…… というつもりでいたのですが、12月に入ってfinalからZE8000が発売になり、従来のイヤホンとは異なった製品であるらしいのが気になって購入してみました.
前述したようにYAMAHA TW-E7Bでそれなりに満足しており、ただ単に高級なパーツを使いましたというような高音質をうたった製品であれば購入には至らなかったと思われます.音質やノイズキャンセリング等が上質なもの、という観点であれば他にも定評のある選択肢もありますし.
しかしながら、ZE8000はメーカーいわく「新しい物理特性」をもとに開発された製品であること、またメーカーであるfinalが型番に「8000」を付けるのは何らかのブレイクスルーを起こしたと認識する製品であること(例:A8000、D8000)からメーカーとしての自信作であることが伝わってきて、興味を惹いたというわけです.
Apple iPhone 13 mini
予約を入れたのが11月25日、発売日が12月16日と約20日間あり、その間に直営店などで試聴をした人から賛否両論が巻き起こっているのをネットで見かけました.興味深いのは人によって言っていることがまちまちなこと.人によっては真逆の感想を述べていたりもします.大部分の人が同様のことを言っているのであればそういう製品なのだなという判断になるのですが、ここまで多種多様な意見が多いとどこまで参考にしていいのかすらわからない状況でした.
また、メーカー自身も短時間の試聴で判断をしないでほしいということを言っており、なんだか癖の強い製品なのだなということだけはなんとなく伝わってきました.
試聴をしてから判断するという選択肢もあったのですが、上記のように短時間の試聴で判断しないでほしい(のちにこの発言の意味がよくわかることになりますが)ということから、だったら買ってみて判断するしかなかろうということで試聴はせず予約キャンセルもしないでそのまま購入することにしました.
発売日に届いたパッケージは昨年末に購入した、ZE3000と同様のもの.ただし充電ケースの大きさや付属品の違いによってパッケージが大きめです.
FUJIFILM X70
充電ケースのスライド式の蓋を開けてペアリングしたのちに行うのはファームウェアアップデート.購入時のファームウェアはVer.1.7.1でしたがアップデートしたところ ver.1.7.8になり、数時間後に試したらさらにVer.1.8.0に更新されました.
Apple iPhone 13 mini
イヤホン本体はなかなか特徴的なデザインをしています.耳穴に近い位置から順に、音響パーツ、バッテリ、アンプやアンテナなど、とそれぞれが分離した構造でデザインされており、そのためにこのような形状をしているそうです.
充電ケースやイヤホン本体はざらついたシボ塗装が施されており、イヤホン本体の棒状のデザインと相まって、箸置きやお菓子の「小枝」のようにも見えます.
肝心の音質について.
初期状態で取り付けられているイヤーピースはMサイズ(そのほかSS/S/L/LLサイズが付属)なのですが、このまま聴いてみたところモコモコとした低音で高音も出ず、なんだこれ…… と思うような音でした.試聴した人にも同様の感想を言っている人がいたのを思い出しました.
他のサイズを試してもみたのですがあんまり印象も変わらず、奥までしっかり入っておらずフィットしていないのではないかと思って小さめのサイズを押し込んでみても違和感しかありませんでした.結局到着したその日はメーカーの意図もわからず、どうしたものかと思いつつさまざまな曲を試聴し続けていました.
翌日も状況としてはさして変わらず、自分の耳と合っていないのかなと思っていたところTwitterかなにかで重要な情報を見つけました.ZE8000のイヤーピースは一般的な形状ではなく、耳穴以外にもイヤホン本体が耳と触れる部分を覆うようにしてシリコンが形成されている特殊な形状をしているのですが、ずっと一般的なカナル型と同様の装着方法だと思い込んで耳穴に深く入れていたわけですが、実はそれは間違いで耳穴に軽く入るくらいの位置で装着する必要があるとのこと.その方法でイヤーピースのサイズを交換しつつ試したところ、いままでのこもった音とは別物の音が聴こえてきました.なるほど、試聴段階で多様な意見が出ていたのはイヤーピースの取り付けかたによるところなのだと気づきました.
取り付けのコツを掴んだのか、はたまたイヤホンがエージングなどにより本来の性能を発揮するようになったのか、はたまた自分の感覚が馴染んできたのか判断がつきませんが、聴いていくにつれて当初とは異なる量感を伴った音質の高さを実感できるようになりました.なのでいままで聴いてきた様々な曲を改めて聴き返したくなります.
また、解像度が高く細かな音まで聞こえつつも、音のエッジがそれほど立っていないので柔らかい印象を受けました.音のエッジを立たせると解像度が高く感じられたりするものだと思いますが、ある程度の柔らかな音を出しつつも高いレベルの解像度があるというのはなかなかすごいものだと思いました.しばらく聴いたのちに比較しようとTW-E7Bに切り替えたところ痩せた音に聴こえてしまいちょっと驚きました.「一度その感覚を受け止めることができた後ではもう引き返せなくなります」とメーカーがいうその意味を思い知らされた格好です.
1年前に発売されたZE3000でも感じられた音の広がり感は健在で、なおかつZE3000ではちょっと弱く感じられた解像感が改善されているので、個人的にも好みの音質や音の出し方をするイヤホンだと感じました.
問題点なのかどうかはわかりませんが、録音状態の良し悪しがはっきりと出てしまう傾向にあるのか、曲によってはやはりこもった印象を受けるものもありました.
Apple iPhone 13 mini
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昨年末に購入したZE3000以降、TW-E7B、そしてこのZE8000もaptX Adaptiveに対応しているので、対応するアダプタを購入しました.クリエイティブラボのBT-W4です.aptX Adaptiveの性能上限である96KHz/24bitではなく、48KHz/24bitまでの対応となります.
Apple製品標準のAACよりは情報量も多くなるので音質向上を期待していたのですが、ZE8000ではそれほどの違いは感じられませんでした.TW-E7Bですと音の情報量が上がったような感覚はあったのですが錯覚かもしれません.
音質以外のことについて.
カナル型のイヤーピースのように耳に奥まで入れて耳栓のような役割を果たす、パッシブノイズキャンセリングではないこともあってか、ノイズキャンセリングの効果は控えめです.また、ノイズキャンセリングと切り替えて動作するモードとして、「ウィンドカットモード」「ながら聴きモード」「ボイススルーモード」があります.イヤホンが縦長でやや角張った形状をしていることもあってか、屋外で風の強い時にはかなり盛大に風切りノイズが聞こえてしまいますので、そうした場合にはウィンドカットモードが重宝します.買い物などで一時的に外部の音を取り込みたい場合にはボイススルーモードを使用しますが、曲は小さいながらも流れ続けます.個人的には曲は止まる方が好みかなと思いました.
また専用アプリも用意されており、昨今の流行なのかあれこれと設定が変更できるようになっています.
アプリでイコライザの設定もできますが、イヤホン本体かアプリ側の不具合か設定が消えてしまうことが多く、現状は使っていません.
音質をさらに上昇させるモードも用意されていますが、イヤホン本体の動作時間が30分から1時間ほど減少してしまうこと、また自分の耳では大きな違いは感じられなかったので、このモードはオフにして使用しています.
結論としては、非常に気に入って使用しています.他にも気に入って使ってきたイヤホンはありますが、例えば出勤時に使用していて「このまま曲を聴き続けたいのでイヤホン外したくない」とまで思う製品は初めて、といえばわかるでしょうか.