映画『ソイレント・グリーン』を観に行ってきました.
公開は1973年で、今回の上映はデジタル・リマスター版での上映となります.
舞台は2022年のニューヨーク.人口が増加しすぎて自然環境が破壊され資源が枯渇した世界.人類は富裕層と仕事のない貧困層に二分されて貧困層は海水のプランクトンから生成されたとされる「ソイレント・グリーン」の配給に頼って生きている、という世界で、殺人事件が起きて刑事が犯人を追ううちに「ソイレント・グリーン」の正体を知り事件に巻き込まれていく…… というストーリーです.
(以下、ネタバレが含まれます)
舞台設定はいまから2年前ですが、まあ現状はこのようになっていなくてよかったとでもいうか、そもそも1973年から見た2022年なので様々なテクノロジーがストップした世界とはいえ、かなり乖離した世界が描かれています.
コンピュータなんてものはほとんどなく(しいていうなら富裕層の住宅に置かれた1973年当時最新とされたテレビゲーム機くらい)、それどころか電力供給すら不安定な始末.なので人類の知識は人間ブックとでもいう知識層の人類に頼っています(このあたり、DUNEの人間計算機にも通じるところがあるような).
また、なんらかの理由によりテクノロジーが衰退し、廃品同然の機械類をなんとか直しつつ使うというシチュエーションは近未来ディストピアSF作品にはよく見られる話ですが、ここでもその世界観が踏襲されています.
メインのストーリーは「ソイレント・グリーン」に隠された秘密を探るというものですが、その途中で主人公である刑事が富裕層の家に捜査に入るたびに職権濫用で酒や食料品を平然と押収(というか略奪)していく様子が、いくら物のない世界とはいえ別の意味で衝撃的でした.
人口抑制のための手段として、出産抑制やランダムな間引き、高齢者の安楽死というのも描かれやすいシチュエーションですが、今作でもその流れは踏襲されており、なおかつそれがストーリーの鍵を握ってもいます.安楽死後の取り扱いや、暴動鎮圧でショベルカーで暴徒を雑に排除するあたり、さらに富裕層の邸宅に「家具」として若い女性が配置されているなど、人への尊厳のなさが見ていて恐怖を感じさせるところでもありました.