
Nikon Zf + NIKKOR Z MC50mm f/2.8
前の投稿でfinal S5000を購入したことについて触れましたが、USBドングル型DACとの相性なのか、それともUSBドングル型DACの5V給電ゆえの電源の余裕のなさなのか、もうひとつ納得のいく音が出せていない印象がありました.
なので、改めてUSB接続のDACで手頃なものを検討しようということで、
・自宅で使用し持ち運びはしないので、サイズや重量には特にこだわりはない
・USB給電だと電源的な余裕がないため、USB給電ではないもの
・iPad mini6と接続して使用し、寝る時なども使いたいので外部電源ではなくバッテリ駆動できるものがよい
・多少の音質調整をしたい
という条件であれこれと調べてみました.
この手のDAC製品はオーディオマニアの沼に片足突っ込んだところに位置するニッチな分野なのでそもそも製品が少なく、また残念ながら国内メーカーは新製品をほとんど出していない(以前はいくつかありました)ような状況なので、海外メーカーのものが選択肢となります.
あれこれと調べているうちに、iFi audioという会社の製品に行きつきました.実はAK HC3を購入した際にも同クラスの検討機材としてiFi audioのGO linkがあったのですが、そのときは知らないメーカーだしちょっとわからないな…… と思って見送っていました.
iFi audioはイギリスのメーカーで、据え置き/ポータブル問わず多種多様なDACなどを製造しています.
当初、iFi audioの製品で候補として考えていたのはhip-dac3でした.小型のスキットルボトルのような形状をしており、スマホくらいのサイズと重量(おおよそ高さ10cm、幅7cm、厚さ1.5cmで重さ135g)で必要十分なスペックを備えた製品です.お値段は3万円ちょっと.ただし、音質を調節するためのフィルタを切り替えるのにファームウェアを差し替える必要があること、エフェクトとして備えている機能が低音を強調するXBassのみで、中高音の調節はできず、また上位機種で備えている音の広がりを出すXSpaceを搭載していないことがネックでした.
その次に検討したのがxDSD Gryphonです.hip-dac3と比べてやや大きくて重たいものの(おおよそ高さ12cm、幅7.5cm、厚さ2cmで重さ215g)、性能は充実しており、フィルタはメニューから変更可能であり、XBassIIとして、低音/中高音/その両方を強調する機能を備え、音の広がりを強調するXSpaceも搭載しています.さらにライン入力や光デジタル入力、Bluetooth接続などかなりの高機能です.評判もそこそこよいですが、お値段もぐっと上がって約8万円.迷ったのですが、ここで妥協して安いほうを選ぶと、あの機能が欲しかった…… となってさらなる散財をしてしまいそう、ということでxDSD Gryphonを選ぶことにしました.

Nikon Zf + NIKKOR Z MC50mm f/2.8
ちなみに「Gryphon(グリフォン)」とは、ライオンの胴体にワシの頭と翼を持つ、神話に出てくる動物のこと.前機種「xDSD」に比べて、多機能であることをなぞらえたネーミングのようです.
発売開始から3年くらい経過しており、何回ものファームウェアアップデータが行われて不具合の修正のみならず機能追加がされており、安定性も増しており安心して使うことができます.発売から年数が経過していると、新型が出てしまうのでは…… という心配もありますが、機能的にはほぼ全部入りで大きな機能追加もないだろうという判断から購入に至りました.

Nikon Zf + NIKKOR Z MC50mm f/2.8
正面.左から順に、3.5mmイヤホン端子、4.4mmバランスイヤホン端子、ボリューム、エフェクト切り替え(長押しで設定メニュー)、入力切り替え.
ボリュームは物理的なボリュームではなく回転させることで内部で出力が変化する、デジタルボリュームのような設計です.また電源スイッチなどを兼ねていて、長押しで電源ON/OFF、1度押すことで曲の停止/再生、2度押しで曲送り、3度押しで曲戻しになります.また、ボリュームレベルに応じてLEDの色が変化するのも面白いギミックです.

Nikon Zf + NIKKOR Z MC50mm f/2.8
背面.左から順に、XBassIIのエフェクトのかかり具合(低音のみ、中高音のみ、両方)の切り替えスイッチ、充電用USB Type-Cポート、データ入力用USB Type-Cポート(設定で同時充電も可能)、光入力、4.4mmライン入出力、3.5mmライン入出力.光入力や4.4mm/3.5mmライン端子は使う可能性は低いので、埃対策としてキャップを準備したほうがいいかもしれません.

Nikon Zf + NIKKOR Z MC50mm f/2.8
底面.「iEMatch」という、ヘッドホン出力を抑えるゲイン調整スイッチ.
また、技適対応のシールが貼られていますが、Bluetooth対応のためです.

Nikon Zf + NIKKOR Z MC50mm f/2.8
天面にはディスプレイを備えており、入力ポート、PCMやDSDといった入力情報、サンプリングレート、ボリューム、エフェクトのON/OFFなどが表示されます.

Nikon Zf + NIKKOR Z MC50mm f/2.8
隠しコマンド?を入力することでフィルタの種類が増え、起動時と終了時にディスプレイにグリフォンが飛ぶアニメーションが表示されるようになります.ちなみに隠しコマンド入力前は、起動時に「iFi」のロゴ、終了時は単純に「OFF」の文字のみでした.フィルタを出し惜しみする理由もよくわかりませんし、最初からこのようにしておいてもよかったのでは?という気もします.

Nikon Zf + NIKKOR Z MC50mm f/2.8
金属筐体なのでケーブルやイヤホン等との接触により傷がつくことを考慮して、Amazonで購入した非純正のレザーケースを装着しています.革の質感もよく、金属と革の組み合わせも気に入っているのですが、装着がかなりタイトで、外そうとしてもまったく動きません.外す必要性が現状ないので問題ないといえばないのですが……
肝心の音質ですが、アンプ性能の差なのか電源の余裕なのか、DACチップの性能やチューニングによるものなのか、その総合によるものなのかわかりませんが、かなり満足しています.艶やかで程よく角の丸められた音質は長時間聴いていても聴き疲れしません.
やや残念なのはバッテリの減りが比較的早いこと.ただし、マニュアル表記では充電に標準(5V入力)で12時間、急速充電で6時間かかるとされているものが、ファームウェアアップデートにより2時間程度にまで短縮されてること、また給電しながら使用できるので大きな問題ではありません.
final S5000と使用することを前提に導入しましたが、音の美しさや余韻など満足のいく音質を得ることができました.末長く使っていくことのできそうな製品です.